「国産小麦は扱いにくい」「品質が安定しない」「グルテンが弱い」
これらは、国産小麦について語られるときによく聞く言葉です。しかし、本当にそうなのでしょうか?
工業製品としての小麦
現代のパン作りは、均一性と再現性を重視します。
輸入小麦(特にアメリカやカナダ産)は、大規模農業で栽培され、ブレンド技術によって品質が均一化されています。これは、大量生産・大量消費の時代には非常に合理的な選択でした。
しかし、この基準で国産小麦を評価すると、どうしても「劣っている」という結論になってしまいます。
小麦は生きている
私たちは、異なる視点を提案します:
小麦は工業製品ではなく、農産物である
国産小麦には、以下のような特徴があります:
- 土地の気候や土壌の影響を受ける
- 品種ごとに異なる個性がある
- 収穫年によって性格が変わる
- 新鮮な状態で使える(輸送距離が短い)
これらは、工業製品の視点では「不安定さ」ですが、農産物の視点では**「豊かな個性」**です。
ワインに学ぶ
この考え方は、ワインの世界では当たり前のことです。
ワインでは、同じブドウ品種でも、産地や年によって全く異なる味わいになります。そして、その違いこそが価値とされています。
「2020年のボルドーは雨が多く、繊細な味わい」 「この畑のピノ・ノワールは、ミネラル感が強い」
なぜパンの世界では、このような語り方ができないのでしょうか?
小麦との対話
国産小麦を使いこなすには、「対話」が必要です。
- この小麦はどんな性格なのか?
- どれくらい水を吸うのか?
- どの程度こねれば良いのか?
- 何時間発酵させるべきか?
これらの問いに、小麦自身が答えてくれます。パン職人は、その声を聞き取る技術を持っています。
実際の事例
「テロワール」(土地の個性)を活かしたパン作りはすでにはじまっています。 フランスでも、日本でも、新たな潮流になりつつあります。
特定の産地の小麦だけを使い、その個性を最大限に引き出すパン屋さんが増えています。これは、均一化の時代への反動であり、農産物としての小麦を再評価する動きです。
日本でも、同じことができるはずです。
関係性の再構築
国産小麦を使うことは、単なる原料選択ではありません。
それは、以下のような意味を持ちます:
- 生産者とのつながり - 顔の見える関係
- 地域経済の活性化 - お金が地域内で循環
- 食の安全保障 - 輸入に頼らない自立
- 環境への配慮 - 輸送距離が短い(フードマイレージの削減)
つまり、食を「消費」ではなく**「関係」**として捉え直すことなのです。
100年後の文化
私たちが目指すのは、100年後も残る文化です。
均一化された工業製品としてのパンではなく、土地と季節と人をつなぐ、豊かなパン文化。
そのためには、国産小麦の価値を再評価し、新しい基準を作る必要があります。
次回は、実際に国産小麦を使っているパン屋さんを訪問した報告をお届けします。
皆さんは、国産小麦についてどう思いますか? ぜひ活動にご協力ください!
東大パン研究会 COMMON 池田浩明