1. 中田ベーカリーについて
井の頭公園のすぐそばにある中田ベーカリーは、いわゆる「目的地になるパン屋」でもあり、「たまたま立ち寄ってしまうパン屋」でもある。 インタビュー中、店主さんは何度も窓の外や店の奥をちらっと見ながら話していた。
「公園があるから人が来る、っていうだけの店にはしたくないんですよね」
そう言いながらも、ここが井の頭公園の隣にあることを、とても大切にしているのが伝わってくる。散歩の途中、ベビーカーを押しながら、犬と一緒に。中田ベーカリーは、そういう日常の動線の中に、自然に組み込まれている。
2. パンへのこだわり
「パンって、全部同じ作り方でいいわけじゃないじゃないですか」
この一言が、このお店のパン作りをそのまま表していると思った。 ベーグルの話になると、店主さんのテンポが少し上がる。
「ベーグルはね、茹でるんですよ。そこが面白い」
一次発酵、分割、二次発酵、という“普通のパン”の流れから外れて、途中でお湯に入る。その工程自体が好きだし、歴史的にもちょっと変わった存在だという。 一方で、フランスパンや食事パンの話になると、酵母の使い分けや、香りの出方の違いをさらっと説明してくれる。
「全部、菌ですからね。良いも悪いもなくて」
天然かどうか、流行っているかどうかよりも、「このパンにはこれが合う」という感覚を信じている。その姿勢が、パンの種類の多さにつながっているのだと思う。
3. 店主さんのパン業界にかける気持ち
「正直、パン屋って効率は悪いですよ」
そう言って笑う店主さんは、でも少しも嫌そうじゃない。
「でも、楽しいんですよ。焼いて、来てくれて、喜んでくれて」
パン屋を続ける理由を聞いて、こんなにシンプルな答えが返ってくるとは思わなかった。 若い職人の話になると、声のトーンが少し変わる。
「やりたいって言うなら、教えたいですよね」
パン屋は、作り方だけじゃなくて、考え方も受け継がれていく仕事だと思っている。だからこそ、人が来なくなって閉じてしまう店の話をするときは、少し寂しそうだった。
4. 22世紀のパン屋を一緒に考える!
「最終的には、空間を作りたいんですよね」
パンの話をしていたはずが、いつの間にか店主さんは「場所」の話をしていた。本があって、コーヒーがあって、人が長居してもいい空間。 パンは、そのための入口みたいなものなのかもしれない。
「パン屋って、毎日食べるものだから、ちょっとした変化にも気づけるじゃないですか」
22世紀のパン屋がどんな形になるのかはわからない。でも、人が集まって、話して、また来る。そんな場所であることは、きっと変わらない。 中田ベーカリーは、すでにその未来を少しだけ先取りしているように見えた。井の頭公園を歩きながら、この店に立ち寄る時間そのものが、「パン屋のこれから」を考えるきっかけになる気がする。また、中田さんは、パン屋の適正価格の活動にも取り組んでいる。
「パンは400円でも妥当な値段だということを伝えていきたい。日本のパン屋が今後増えていくために。」
そういった店主さんはちょっと疲れた顔をして、それでもとても楽しそうだった。